発達障害のはなし④【感覚過敏】ってなあに?

この記事は2021年11月16日に作成および更新したものです。
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こんにちは!
シリーズで書かせてもらっている発達障害のはなしです。
今回は発達障害を抱える子たちが持つ感覚面のしんどさについてまとめたいと思います。

感覚と言えば「五感」
「聴覚」、「視覚」、「味覚」、「嗅覚」、「触覚」ですね。
そして発達を考えていく場合に「前庭覚」、「固有受容覚」というさらに重要な感覚が二つあります。
後の二つの感覚についてはあまり知らない方も多いかもしれませんが、私たちが生活しているためには非常に重要な感覚なんですよ。
発達障害を抱える子どもたちはこの7つの感覚について過敏と言われるほど敏感だったり、逆に非常に鈍感だったりします。
ただ発達障害があるからといって必ず感覚面のしんどさを抱えているわけではないですし、【感覚過敏】【感覚鈍麻】があるからといって発達障害だというわけではありません。


またそのそれぞれの感覚刺激を交通整理して必要な感覚情報だけに注目するようにする「感覚統合」という働きが不十分なことも多いです。

彼らの日々の生活を難しくしているのにはこういう体の感覚面の問題も多く関わっているのではないかと思います。
今回はそんな【感覚面の難しさ】についてのお話です。


▼この記事を読んで分かること
◎【感覚過敏】ってなあに?
◎【感覚統合】ってなあに?
◎感覚過敏と感覚器の未発達

この記事を読めば、発達障害を抱える子どもたちの感覚面の問題点とその対策が分かるので、ぜひ参考にしてみてください。

1.【感覚過敏】ってなあに?

まずは【感覚過敏】についてです。

その名の通り感覚器が過敏に反応している状態です。

音楽家は聴覚が敏感だったり、料理人は味覚が敏感だったり、それぞれ自分の長所として仕事に活かす人もいますよね。

つまり、ただ過敏であるだけでは問題だというわけではなく、生活に支障をきたすほど苦痛な感覚刺激として受け取ってしまうということが問題なんだと思います。

感覚過敏

まずは【感覚過敏】についてです。
よく耳にするのは「聴覚過敏」「触覚過敏」でしょうか。

【聴覚過敏】
私たちが聞いている音以上に色んな音に過敏に反応して不快な思いをしている状態ですね。
一定の音に嫌がる子も多いですね。
例えば、「赤ちゃんの泣き声」「ハンドドライヤーの音」「掃除機の音」「運動会のピストルの音」等です。
当人たちにとっては耐え難い音だと言い、時に癇癪やパニックという困った行動につながることもあります。
つまり感覚面の過敏さによって癇癪・パニックという問題行動を起こすこともあるということです。
イメージとしては「私たちが黒板に爪をたててるような不快音をずっと聞いている」という感じでしょうか。

【触覚過敏】
こちらも私たちなら特に何にも感じないような皮膚刺激を不快に感じているという状態です。
そういった触覚過敏によってさまざまな問題が起こりますね。
例えば、「特定の素材の服しか着ることが出来ない」「痛くて爪や髪を切ることが出来ない」「シャワーや雨が痛く感じる」等です。
筆者の息子はこの触覚過敏があり、今は大丈夫ですが幼い時は爪や髪を切ることが出来ず必ず寝てから切っていました。
シャワーや雨が痛いというのは中々理解しがたい感覚ですが、当人たちにとっては天気に敏感になったり、お風呂に入れなかったり、色々生活に支障をきたす重大な問題となり得るのではないかと思います。

感覚鈍麻

次に「過敏」とは真逆の「感覚鈍麻」という問題を抱える子どもたちもいます。
よく耳にするのは「痛みに反応しない」ということでしょうか。
「痛み」に対しての感覚が弱いために、重症なケガを負っているのに全く気付いていないということがあります。
「骨折しているのに気が付かない」というようなびっくりするような例もきいたことがあります。
また他には「暑い・寒いの感覚が鈍いために、気温に応じた服装を選ぶことが出来ない」、ということもあります。
真夏に長袖を着ていたり、とても寒い日に半袖半ズボンで過ごしていたりするようですね。
最近は気温が上昇しているので、真夏の熱中症等も怖いですよね。
自分で適切な服装を選ぶことが難しいのなら、「25℃以上なら半袖」という風に具体的な気温に合わせたルールを設定するのもいいかもしれません。
また「喉の渇き」等を自覚することが少ないという子もいるようで、そういう場合も時間に合わせて水分補給したりする工夫が必要となりますね。

感覚器の未発達

これは筆者の個人的な見解なんですが、【感覚過敏】【感覚鈍麻】という状態の他に単純に「感覚器が育っていない」という状態もあるように思います。
感覚とは「体の外から入ってきた感覚刺激を脳で情報として受け取り処理すること」ですが、単純にその脳・神経系のネットワークが育ってないということもあるのではないかということです。
例えば、聴覚過敏ということも耳の感覚器が育ち切っていないため起こることがあるのではないかということです。
また、「耳(聴覚)が育っていない」から視覚に頼ることになり「視覚過敏」気味になるということも本で読んだことがあります。
様々な感覚器が相互的に関わりあってその子の身体の状態を作っているのではないか、とも思います。
育ってないなら育てる様な働きかけをしたらいいのかな、とも感じますね。
感覚刺激は脳の栄養となりますので、たくさん刺激を与えて感覚器や感覚神経等を活性化させることも重要なのではないかな、と考えています。

2.【感覚統合】ってなあに?

では、聞きなれない言葉かもしれませんが【感覚統合】について書いていきたいと思います。

筆者は息子の育児においてこの【感覚統合】という言葉をはじめて知りました。

ですが、意識してみると確かにその通りだな、と思います。

Wikipediaには以下の通りあります↓↓


感覚統合とは、「生活の中で、さまざまな感覚器官を通じ、絶えず身体に入ってくる複数の感覚(五感・固有受容覚・前庭覚など)を正しく分類・整理し、取り入れる脳の機能」のことである。この機能により、その場その時に応じた感覚調整や集中が可能になり、周囲の状況の把握とそれをふまえた行動(自分の身体の把握・道具の使用、人とコミュニケーション など)ができるようになる

我々の生活の中にはたくさんの感覚刺激が溢れています。

「目から入る情報」「耳から入る情報」「皮膚から入る情報」と様々ですが、我々は意識せずとも必要な情報を選び抜き調整することで状況にあった適切な行動が取れるようになっているんですね。

そしてこの【感覚統合】という働きが発達障害を抱える子どもたちは不十分だとも言われています。

触覚・前庭覚・固有受容覚

そしてその【感覚統合】という働きを考えるときに重要視されているのが「触覚」「前庭覚」「固有受容覚」です。
感覚刺激として実感しやすいのは五感ですが、その他に日常生活では実感しにくいこれらの3つの感覚もとても重要な役割を果たしています。
触覚以外はなじみがないかもしれませんが、無意識的に働き我々の生活の中では重要な役割を果たしています。
特に前庭覚ことばの獲得やコミュニケーションにも関わっていると言われていますのでとても重要なのがわかりますね。

この3つの感覚は【感覚統合】を考える際にとても重要な感覚なんですが、なじみのない方もいると思うので詳しく解説します。

(以下「発達障害の子の感覚遊び・運動遊び~感覚統合をいかし、適応力を育てよう1~」(木村順著・講談社)を参考に筆者の経験も含めまとめています。)
いわゆるバランス感覚で、姿勢の維持目の動きのコントロールなどに関わっています。
転んだり体勢が崩れたりしないように、目が覚めている時は常に働いています。
この前庭覚の働きが鈍い子は落ち着きなく動き回ったり、飛び跳ねたり、くるくる回ったりとあえて感覚刺激を入れようという自己刺激行動を取ることもあります。
ちなみに、筆者の息子は前庭感覚が鈍いのでブランコや平均台・トランポリンなど、前庭覚を育てる遊びを積極的にやってきたのでバランス力はすごく成長しましたよ♪
身体をコントロールする働きで、体の深い部分で感じる深部感覚です。
コップに飲み物を注ぐときに細かな筋肉の動きを調整をしたり、高いところにあるものをおとさないように取るために筋肉・関節をうまく使ったり、と本当に細やかな動きで普段は意識せずに使っている感覚です。
固有受容覚が上手く働いていないと全身のコントロールが乱れ、体全体の動きが雑になります。
また、ボディイメージが未発達にもなり、見えていないと手足の動かし方が分からなかったりするため、はしごを降りることが出来ないというような事も起こります。
「こたつに入ると自分の足がなくなる」というびっくりするような話も当事者のエッセイで読んだことがあります。
触覚表在感覚と言われ、触るとき触られるときに感じる感覚です。
【感覚統合】を考えるときに触覚としては、『原始系』『識別系』の二つの役割があります。
『原始系』とは本能的な働きで自分に触れたものを敵なのかエサなのか判断し、防衛行動・闘争行動・とりこみ行動のいずれかのスイッチを入れるという機能です。
息子は爪切りや散髪を嫌がっていましたが、それはこの本能的な原始系の防衛反応のよるものだったと思われます。
また『識別系』とは哺乳類が進化する中で育ててきた認知的な能力で、触ったものに注意を向けるときに働きます。
触ったものの大きさや形・素材を判断する時に使います。
成長とともに『原始系』の働きが押さえられ、『識別系』の働きが育ってくることも重要なんです。
筆者はこの識別系を育てるために、触覚遊びを沢山楽しみました。

【感覚統合】を促す遊び

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では【感覚統合】を促すような遊びの一例をご紹介します。

感覚統合が不十分な場合全身運動や身体を使った触れ合い遊び等で感覚面を育てることが出来ると言われています。

【感覚統合】を促す遊びとして一番おススメなのが「アスレチック遊び」です。

アスレチックはまたぐ、くぐる、よじのぼるなどたくさんの動きをしますよね。

日常生活では体験できないような様々な動きを通して自分のボディーイメージを育てることが出来ます。

またいだりバランスを取ったりする遊びを通して前庭覚を育てることも出来ます。

全身運動もしながら手指も使うので手先の感覚を育てることも出来るし、脳へのいい刺激にもなりますね。

また前庭覚を育てる遊びとしては上記ようなトランポリン・ブランコの他に滑り台や回転いす等もおススメです。

触覚を育てる遊びとして筆者は息子と「箱の中にあるものを当てるゲーム」や「背中に書いた指文字を当てるゲーム」等、意識して色々行ってきました。

このような感覚を育てることで【感覚統合】の働きを育てることができるようですよ。

3.まとめ

いかがでしたでしょうか。
実はあまり知られていない発達障害を抱える子どもたちの抱える【感覚面の問題】について書かせてもらいました。
感覚器の未発達、感覚神経の異常によって起こる身体のしんどさによって日頃の困った行動が起きているということもあると思います。
「どうしてそんなことするのかな?」と思ったらその原因をしっかり掴み、環境調整や療育等を行っていくことで適切な行動を取れることもあると思います。
また感覚は育てることが出来るものだと個人的には考えています。
親子で楽しみながら感覚器を育てていくのもいいですね。
一保護者として色々勉強して得た知識、息子を育てる中で得た経験をもとに、今回は【感覚面の難しさ】について書かせていただきました。

中々当人のしんどさを理解することは難しいのですが、知識を得ることでその助けにはなるかなと考えています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

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(担当ライター:サニー