その悩み、お坊さんに聞いてみよ!【お寺の子育て相談室】⑥

この記事は2025年12月27日に作成および更新したものです。
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子どもの発達、友達関係、パートナーとの役割分担、仕事との両立......。
情報があふれる現代でも、子育ての悩みは尽きません。
むしろ、情報に振り回されて何が正解かわからなくなることも。
そんなママンペール世代が抱える子育てのお悩みについて、お坊さんにたずねてみました。
はるか昔から人々の心に寄り添ってきた仏教に、子育てがちょっぴり楽になるヒントがあるかもしれません。

▼この記事を読んで分かること
◎夫婦であっても「違っている」ことが大前提。
◎YouメッセージよりもIメッセージが効果的。
◎予想もしない形で変化が訪れることもある。

この記事を読めば、子育ての悩みについてのヒントがきっと得られるので、ぜひ参考にしてみてください。

1.子育ての悩みにお坊さんが寄り添います

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「仏教」と聞くと、一般的には法事やお葬式などのイメージが大きいのではないでしょうか?
でも、本来仏教は、「今を生きる人々」の悩みや苦しみを解決するために生まれたもの。
私たちの持つ「常識」や「世間の価値観」を一歩離れ、別の視点からものごとをとらえ直すことができる教えです。
今回は、そんな仏教にたずさわるお坊さんに、子育ての悩みを相談してみました。
読むうちに、自分の子育てについての気づきや、ハッとするような言葉に出合えるかも!?

2.今回のお悩みは……

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この記事では、ママンペールライターが、SNSなどを通じて子育て中のママパパからお悩みを募集。
その中からピックアップした質問を、お坊さんに投げかけてみました。
さて、今回のお悩みは......!?

「子どもには厳しくした方がいい」という夫。子どもの自己肯定感が下がるのではないかと心配です......。

今回のお悩み:
「保育園年長と年少の兄弟を育てる母親です。
子どもに対してどのようにしつけをすればよいのか、悩んでいます。
『子どもはほめて育てる』『なるべく否定的な言葉は使わない』などよく聞きますが、夫はもっと厳しくした方がいいと言います。
実際、子どもがちょっと誤ったことをするとかなり厳しく叱り(手は出ませんが、運転が荒くなったりして怖いです)私としては子どもの自己肯定感が下がるのではないかと心配になってしまいます。
どうすればいいでしょうか。」 (30代女性)

3.お坊さんからの回答

今回は、広島市西区にある善法寺の僧侶、前田純代さんに質問を投げかけてみました。
所属宗派が発行する、子どものための季刊誌『仏教こども新聞』(浄土真宗本願寺派少年連盟)では、子育てをしながら編集委員長を担当。
退任後の現在は、アドバイザーという役割を担っています。
また、宗派の月刊誌『大乗』や地方新聞の連載コラム、各地での法話活動など、仏教の教えを広くわかりやすく伝えています。

夫婦でも「相手は宇宙人」くらいの気持ちで

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―今回の相談者さんは、パートナーの子どもに対するしつけが厳しすぎるのではないかと悩んでいます。

まず、未就学のお子さん二人を育てるという大変な状況にありながら、お子さんたちの自己肯定感を育てたいと切実に願っている相談者さんは、本当に素晴らしいと思います。
しつけの仕方については、危険な場合を除いて、基本的に子どもを叱ったり怒ったりする必要はないのではないでしょうか。
後でまた詳しく述べますが、子どもに注意するとき、私はちょっとしたコツを実践しています。

それから、パートナーのしつけが厳しすぎると心配しておられますが、ここでまず意識しておいた方がいいのは、「夫婦であってもお互いまったく違う存在だ」ということです。
たとえ同じ家族でも、一人ひとり見ている世界は違い、それぞれが独自の“物差し”を持っています。
パートナーはパートナーなりに、子どものことを思って行動しているのかもしれません。

相手が「自分と同じはず」「分かるはず」と思い込むと、それが原因となって、怒りや衝突、落胆を生んでしまいます。
いっそ、相手を「宇宙人」だと思っても大げさではない。
それくらい、お互いの違いを前提として、話し合いの場を持つことが大切なのではないでしょうか。

伝えるときはYouメッセージよりIメッセージ

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ー違いを認識した上で、話し合うことが大切なんですね。どんなふうに話せばうまくいくのでしょうか?

これはコーチングなどでもよく言われますが、相手を主語にする「Youメッセージ」よりも、自分を主語にする「Iメッセージ」で会話をすると思いが伝わりやすくなります。
もし、いきなり「あなた(You)のやり方は間違っている」などと言ったら、相手はきっと素直に受け入れられないでしょう。
一方、これをIメッセージで表現すると、「私(I)はあなたがそうすると~のように感じる」、または「私(I)はこういうやり方がいいと思う。なぜなら~」と、このようになります。
相手がどうかではなく、あくまで自分がどう感じるか、思うかに焦点を当てた表現にすると、会話がスムーズになります。

ー相手の問題ではなく、自分がどう感じるか、思うかに焦点を当てる。仏教の考え方にも通じるように思います。

その通りですね。仏教では、怒りや苦しみの原因は「相手」ではなく「自分」の中にあると考えます。
私たちは自分の“物差し”を通してしか世の中を見ることができませんが、それが自らを苦しめる原因になっている。
パートナーや子どもに対しても、「こうなってほしい」「こうあるべきだ」と思うと、思い通りにならなかったときに怒りや落胆が生まれます。
でもそれは、「自分の“物差し”」と「相手の“物差し”」がぶつかっているだけで、どちらが正しいわけでもありません。

さらに、仏様の視点で見ると、私たちは立場や能力にかかわらず「どの命もそのままで大切な存在」です。
母親であろうが父親であろうが、また子どもであろうが、そこに立場の上下や善悪はありません。
そう思えたとき、振り上げた拳をふと下ろせることがあります。

「合掌」の姿勢でケンカはできない

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―前田さん自身は、ご主人と意見がぶつかったことはあるのでしょうか?

もちろんありますよ!
いまだに覚えているのは、現在高校生の息子が、まだ1歳だったときのこと。
ある日、幼い息子の前で、夫とケンカをしてしまったことがあります。
はじめは小さな言い争いだったのが、売り言葉に買い言葉でんだん激しくなっていきました。

そのとき息子がよちよちとやって来て、私の右手と左手を合わせて「なむなむ」と言ったんです。
その瞬間、急に恥ずかしくなって、夫婦げんかもあっという間におさまりました。
1歳の子なりに、一生懸命考えたんでしょうね。

私たちは、胸の前で手を合わせてケンカをすることはできません。
もし何かで激しく感情が高ぶったときは、心の中でもいいので合掌してみてください。
すこし気持ちが落ち着いてくると思いますよ。


予想もしない形で変化は訪れる

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―思い通りにいかない子育て。どう向き合っていけばいいでしょうか。

仏教には「一切皆苦(いっさいかいく)」という教えがあり、「人生は思い通りにいかない」とはっきり伝えています。
子育ては、その最たるもの。
「思い通りにいかない」たびに、親は自分の中のこだわりや思い込みに気付かせてもらっています。
だから、子どもは親にとって先生でもあるのですよね。

夫婦間の歩み寄りも、努力してすぐに成果が出るとは限りません。
期待しすぎず、でもあきらめずに時間をかけることが大切です。
もし「子どもの自己肯定感を育てたい」など、子育てについて自分なりの思いがあるなら、相手に求めるのではなく自らが実践し続けることだと思います。
すぐに変わらなくても、相手も少しずつ影響を受けます。
そして、あるときふと、予想もしなかった形で変化が訪れるでしょう。

子育ては本当に大変です。
頑張っているママ、パパを、心から応援しています。

4.まとめ

・夫婦であっても「違っている」ことが大前提。
・気持ちを伝えるときは「Iメッセージ」で。
・感情が高ぶったら、心の中で合掌を。
・子育ても夫婦関係も、あきらめず時間をかけて。
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【回答いただいたお坊さんのご紹介】
前田純代/善法寺坊守
神奈川県生まれ。東京大学文学部を卒業後、大手シンクタンクに勤務。在職中に渡仏しMBAを修了する。
その後、お寺の男性との結婚を機に退職し、僧籍を取得。
所属宗派である浄土真宗本願寺派が発行する『仏教こども新聞』の編集などに携わる。
2023年、本願寺出版社より『結婚してお坊さんになりました』を刊行、話題となる。
(担当ライター:いづみ