昨年に引き続き、本年度も学校では、コロナ禍において色々な制限がある中、平常時と異なる教育の創造が求められています。一方で、子どもは、本来高いものにあこがれ、もっと伸びよう、もっと成長しようと願っているものです。その願いにこたえるため、学校ではあらゆる教育活動の中で知恵と工夫を駆使して子どもたちの学びへ向かう態度の育成に心を砕いていかなければなりません。現在、求められている児童の資質・能力の育成に向けて、どのようなことに留意して教育活動を展開していけばよいのでしょうか。
知識を知恵に!
経験を確かな知識に
例えば、五年生の理科「わたしの研究」という題材では、夏休み前に自分がやってみたい研究に取り組む意欲を持たせる単元があります。テーマ、計画、実験、まとめという科学研究の手法を学びますが、本校では、「交替制転向反応(こうたいせいてんこうはんのう)」を例として意欲を高めた授業がありました。「交替制転向反応」というこの難しい言葉を私が初めて耳にしたのは、夕方、お迎えに来たお母さんに熱心に説明している二年生に出会った時のことです。二年生の生活科でダンゴムシを題材として観察、実験を経験している子どもたちにとっては、「交替制転向反応」は、すでに既習の知識です。小さな生き物の生きる知恵、すなわち、ダンゴムシは、右折後、次には必ず左折するという習性により、敵から遠くへ逃げることができるというものです。
知識を問い直す
五年生では、この知識が本当に正しいことかを確かめることを通して、科学する心を養いたいとの指導者の意図がありました。二年生は、グループで教師が作った実験装置で観察しました。五年生は、身近な牛乳パックを利用して実験装置を各自が作り一人一人が複数回確かめます。実験結果はタブレットに入力。瞬時にクラス全員のデータがグラフ化され、いくつか例外があること、例外をどのように解釈するか等々、「見方・考え方」を学びます。大量の牛乳パック、生きたダンゴムシの数が指導者の熱意の表れです。
自ら学び、知識を知恵に
このような授業を経て家庭でも、さらに疑問を追究する児童がいることでしょう。本校が、毎年科学研究に優秀な成績を収めていることや「広島市児童生徒発明くふう展」において、開校以来、連続して「学校賞」をいただいていることも、うなずけます。日々の授業の一コマ一コマを通して子どもたちは、科学する心を養い自ら知識を知恵にまで高めようとする楽しさに心を震わせています。