国際バカロレア(IB)プログラムでは10の学習者像が示されています。子供は学習の過程でこれらの特性を身に着けていきます。今回は3つの学習者像、「挑戦する人」「心を開く人」「考える人」について見ていきたいと思います。
これらの特性の中でも特に「挑戦する人」になるには子供の意欲が必要です。私たちが直面する挑戦のいくつかは身体的なものですが、最も困難な挑戦の多くは身体的なものではなく、むしろ頭の中で私たちに直面します。思考と世界観は自分の物の見方の基本であるため、自分の思考に挑戦するとなると、自分のアイデンティティそのものに疑問を投げかけることになります。これは自分の中で脅威となり得ます。脳内の扁桃体は、感情的および肉体的な脅威を同じ方法で処理するため、自分とは異なる物の見方に反応するのも不思議ではありません。自分自身を多方面から見られるようになるには、課題や変化に直面しても回復できる力、国際的な意識を持ち自立することが求められます。
残念ながら、テスト重視のシステムは子供の挑戦意欲を低下させる可能性があります。先生の話を聞き、テキストの内容を覚え、テストで出し切るシステムに本当の意味での挑戦はありません。IBの探究主導型のアプローチは、生徒が独立した探究を追求する際に挑戦を奨励します。自分のアイデアを提示し、擁護することには常に挑戦を伴うのです。
自分の文化や個人の歴史を理解することが心を開く人であるための基礎となります。心を開く人を考えるとき、それは他人を受け入れること、または他人の視点を理解することであると想定されがちです。ところがIBは心を開くのは何よりもまず自分に対してだと示しています。他人を理解する前に、自分自身を理解する必要があるのです。それは私たちがその次の一歩を踏み出し、他の誰かを理解するためです。批判的思考者(多方面から考えることのできる人)であることと心を開く人であることは密接に関連しており、どちらも自己を知り、評価し、理解することから始まるのです。批判的でオープンマインドな思想家として、自分の文化や個人の歴史をよりよく理解すると、共感、思いやり、他人への敬意を示すことができるようになるのです。
挑戦する人であること、心を開く人、批判的思考のできる人は、一つができたら次へ進むといったものではありません。すべてが互いに影響し合い、同時に育っていきます。しかし、子供たちがこれらの特性を身に着けるには子供との会話に何らかの方向性と体系的なプロセスが必要です。次回は子供との会話について触れてみたいと思います。
心を開き、批判的思考者になるために必要な挑戦
