私たちが見えない世界

 便利で快適な世界によってもたらされる驚くべき危険があります。子供のSNSの利用です。顔が見えない誰かと子供がやりとりをしていて心配になったことはありませんか?オンライン上でのいじめについて不安になったことはありませんか?恐らくこれらの起こりうる物理的、社会的問題を想像することでしょう。
 また、子供がオンラインで費やす時間の長さも心配です。睡眠不足などの問題を引き起こしますし、とりわけ日々の学習の妨げにもなります。SNSによっては使用することで、より孤立を感じるという皮肉もあります。その他、知的リスクとアイデンティティに関するリスクもあります。
 SNSは便利に思え、小さな仮想世界は素敵で安全な場所のように思えますが、これは大きな間違いです。馴染みのあるコンテンツが提供され、同じような感覚の人が選択し、同じようなタイプの人が集まるのです。私たちはますます自分の意見が正しいと確信するようになり、経験の範囲は制限されて行きます。
 確信を持ちすぎると、仮想世界の限られた狭い世界だけが自分の世界と思い込み、狭い視野で見える世界が実際の世界を表していると信じるという知的リスクに陥る可能性があります。
 また、同様の意見によって自分の意見が補強されて、過度に確信を持つと、反省、批判的思考(クリティカルシンキング)などの子供の思考力を制限する可能性があります。
 子供のアイデンティティは、新しいことを経験するたびに拡大して行きます。これが挑戦的また不快なものから保護されるようになると停滞してしまいます。
 リスクに対峙するには子供をサポートするために持つ会話が重要になってきます。子供を保護するばかりではなく、子供が潜在的なリスクと自分で特定できるよう導くことが大切です。
 結局の所、私たちは永遠に子供と一緒に暮らすことはできません。問題解決能力を培い、新しいアイデアや経験を自分で探求していくことによってアイデンティティを拡大させていく必要があるのです。
 今の社会ではテクノロジーなしで生きていくことは考えにくく、SNSの普及を止めることもできません。どのようにしてテクノロジーと上手く付き合っていくのかをサポートする方法を検討する必要があります。




ダミアン校長