朝起きられない子どもについてお話します。

●はじめに


 起立性調節障害(以下、OD)は、思春期に発症しやすい自律神経機能不全で、小中学生の5~10%にみられ、近年増加してきています。朝起きられない、頭痛、めまい、立ちくらみ、倦怠感などがみられ、日常生活に支障をきたしたり、長期の不登校や引きこもりにもなるといわれています。気圧の影響を受けやすく、春から梅雨時期に悪化しやすい特徴があります。


●診断と治療


 問診と起立血圧試験により診断します。起立直後性低血圧、体位性頻脈症候群、神経調節性失神、遷延性起立性低血圧の4つのタイプがあります。日常生活に支障をきたす場合、メトリジン、リズミック、漢方療法などの薬物療法を行います。自主性を促すために、薬の自己管理を習慣づけましょう。弾性ストッキング、ODバンドも有効なことがあります。


●日常生活で気をつけること


 朝起きるときは、2~3分腰かけてゆっくり。カーテンを開けて、朝日を浴びるようにします。子どもを起こすときは、怒らず声かけを何度か繰り返し、身体をさすると血行がよくなります。頭を下げたまま腰をかがめるように歩き出し、立っているときは、足踏みや両足をクロスに交叉します。起立時間を短くし、立ちくらみを感じたときは、しゃがみこんで頭を膝の間に入れる姿勢を取ります。規則正しい生活を心がけ、23時には床に就くようにします。テレビ、パソコン、ゲームを合わせて、1日1時間以内にして、夕方には適度な運動をしましょう。15分程度のウォーキングから始めてみます。循環血漿量を増やすため、水分(1.5~2L/日)、塩分(10~12g/日)をしっかりとります。暑い場所を避けるようにします。


●姿勢を整え、ストレッチと深呼吸


 ODの子どもは、猫背やストレートネックなど姿勢が悪く、肩こりもひどい傾向があります。姿勢を正し、長時間座ったままの姿勢を避けるようにします。ストレッチと呼吸法(鼻から息を5秒かけて吸う、5秒間息を止める、口から息を5秒かけて吐く)により自律神経のバランスを整えましょう。


●環境調整


 学校に行けない、皆と同じように活動できないストレスを本人が抱え込まないようにします。学校の先生、友だちに病状を理解してもらうと、本人の精神的負担が軽くなります。


●転帰について


 成人になると自律神経のバランスがよくなり、ODは軽快します。軽症例では、数ヵ月以内に症状がなくなります。中等症、重症では、成人になっても約4割の人で、何らかの症状が残ることがあります。食事、運動、睡眠、生活習慣に気をつけて、自分の体と上手につきあっていく必要があります。


●おわりに


 ODでは午前中調子が悪く、午後から夕方にかけては、何もなかったように元気になります。そのため、「怠け」「ずる休み」と誤解されがちです。ネガティブな言葉がけを避け、小さな前進を認めてあげます。将来の夢や人生設計があると、乗り越えていく力になります。子ども自身が病状を理解した上で、自主性と自己責任を高めて、課題を一つずつクリアしていきましょう。





野村真二院長