その悩み、お坊さんに聞いてみよ!【お寺の子育て相談室】⑤

この記事は2025年12月1日に作成および更新したものです。
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子どもの発達、友達関係、パートナーとの役割分担、仕事との両立......。
情報があふれる現代でも、子育ての悩みは尽きません。
むしろ、情報に振り回されて何が正解かわからなくなることも。
そんなママンペール世代が抱える子育てのお悩みについて、お坊さんにたずねてみました。
はるか昔から人々の心に寄り添ってきた仏教に、子育てがちょっぴり楽になるヒントがあるかもしれません。

▼この記事を読んで分かること
◎夫婦間の差がかならずしも悪いものとは限らない。
◎表面的な悩みの奥に、本質が隠れていることも。
◎大事なのは「自分の心」と向き合うこと。
◎そのままの自分が大きな存在に支えられている。

この記事を読めば、子育ての悩みについてのヒントがきっと得られるので、ぜひ参考にしてみてください。

1.子育ての悩みにお坊さんが寄り添います

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「仏教」と聞くと、一般的には法事やお葬式などのイメージが大きいのではないでしょうか?
でも、本来仏教は、「今を生きる人々」の悩みや苦しみを解決するために生まれたもの。
私たちの持つ「常識」や「世間の価値観」を一歩離れ、別の視点からものごとをとらえ直すことができる教えです。
今回は、そんな仏教にたずさわるお坊さんに、子育ての悩みを相談してみました。
読むうちに、自分の子育てについての気づきや、ハッとするような言葉に出合えるかも!?

2.今回のお悩みは……

この記事では、ママンペールライターが、SNSなどを通じて子育て中のママパパからお悩みを募集。
その中からピックアップした質問を、お坊さんに投げかけてみました。
さて、今回のお悩みは......!?

パートナーに、もっと積極的に子どもの学習や習い事ことなどに関心を持ってほしい!

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今回のお悩み:
「夫に、もっと積極的に子どもの学習や頑張ってる習い事ことなどに関わってほしいです。
どうしたら良いのでしょうか?」(40代女性)

3.お坊さんからの回答

今回は、広島をちょっと飛び出し、大三島(愛媛県)にある「万福寺」の副住職、浅野執持(しゅうじ)さんに質問を投げかけてみました。
法話を専門に行う「布教使」として活躍し、また仏教絵本の著者でもある浅野さん。
柔和で自然体な人柄が、多くの人に親しまれています。

子育てに積極的に関わるお父さんが増えている

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―今回のテーマは、夫婦間の子育てに対するギャップについて。
相談者さんは、パートナーが子どもの習い事などに積極的でないことに悩んでいるようです。


その思いももっともです。
今は子育てに積極的に関わるお父さんが増えていますから、ご主人がそうでないと余計気になりますよね。
私の周りでも、仕事を休んでまで子どものスポーツの応援に行くという父親がいる。
一昔前には考えられなかったことでしょう。

ただ、パートナーへの期待が大きすぎると、ご自身もしんどくなってしまう場合があります。
後半でまた触れますが、まず「人は思うように動いてくれないもの」ということを前提として、相手といかに付き合っていくか、また自分自身がどう受け止めていくかを考える必要があると思います。

夫婦でバランスが取れている可能性も

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―子どもへの関わり方の差が問題になるのは、よく理解できます。

夫婦間で子育てへのスタンスが違うことは、一見マイナスなように思うかもしれません。
でも、見方を変えると、それで家庭内のバランスが取れていると考えることもできます。

もし夫婦そろってあまりに子どもへの関わりが強いとしたら、お子さんは苦しくなるのではないでしょうか。
結果論かもしれませんが、相談者さんの家庭の場合は、熱心なお母さんとそうでないお父さんがいることで、ある意味まとまっているのかもしれません。

―ただ、相談者さんはご主人の様子に満足していないようです。

これはあくまで推測ですが、もしかしたら、相談者さんはご自身のがんばりを認めてもらいたいという思いもどこかにあるのではないでしょうか?
一般的に、女性は男性よりも共感や理解を求めます。
ご主人が自分と同じように熱心にならなくても、話を聞いてくれる、大変さに理解を示してくれるだけでも違うのかもしれません。
だとすれば、ご主人の子育てへの関わり方以前に、夫婦間のコミュニケーションを見直すことも大事だと考えられます。

悩みの奥に、本質的な問題が隠れている!?

―なるほど。表にあらわれた悩みの奥に、別の問題が隠れている……ということでしょうか。

そうかもしれません。
かつて、私は京都の「大谷本廟」(墓所)というところで、一般の方々からの仏事相談を受けていたことがあります。
そこでは、法事や葬式などの仏事についての質問や、「お墓が欠けてしまったがどうすればよいか」といった相談が寄せられていました。
でもたいていの場合、話を聞いていくうちに、家族間の問題やより複雑な悩みに入っていくことが多かったんです。
軽い相談をきっかけに、はからずも深い問題が現れたのかもしれません。

表に見える問題を解決することも大事ですが、自分自身が本当は何を求めているのか、ということを今一度考えてみられると、何か気づきが得られるのではないでしょうか。


泣いてもいい、怒ってもいい

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―今回の相談について、仏教の視点で何か言えることはありますか?

仏教では、何か問題が起こったとき相手をコントロールするのではなく、自分の心をどう整えていくかということを考えます。
思い通りにならないことがあると、きっと誰でも「相手に変わってほしい」と思うことでしょう。
ですが、常に向き合うべきは自分の心。たとえ身近な家族であっても、別の人間である以上相手を変えることはできません。

―自分自身の心を整える……。頭では理解できますが、実行するのは簡単ではなさそうです。

仏教にもいろいろな宗派があって、私自身は「浄土真宗」の僧侶になります。
浄土真宗の世界観では、自分を整えるといったことから、さらに別の視点が与えられます。
それは、「泣いてもいい、怒ってもいい。そのままのあなたがもっと大きな存在に支えられてるんだよ」
―そんな視点です。

問題を解決するのではなく、問題があることを前提として、もっと大きな視点から人間を見つめる
そこに、「誰ひとり取り残すことなく救う」と誓われた仏さまの存在があります。

このような話を聞いたからと言って、すぐにスッキリするものではないし、答えとしては満足いかないものかもしれません。
私自身も、今回のお悩みを聞いて「仏教的に解決する」というよりは、いち父親として、自分の家庭のことを省みながらお答えしました。
ともに悩み、ともに救われていく者同士として、相談者さんのことを心から応援しています


4.まとめ

・夫婦でバランスが取れている可能性も。
・問題の奥にある「本当の思い」に目を向けてみて。
・向き合うべきは、自分自身の心。
・泣いてもいい、怒ってもいい。そのままの姿で支えられている。

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【回答いただいたお坊さんのご紹介】
浅野執持/万福寺副住職
愛媛県今治市・大三島にある万福寺の副住職。二児の父。
僧侶となる以前は美術館の学芸員として勤め、若いころから美術への関心を深めてきた。
仏教(浄土真宗)の教えを広く伝えるために制作した絵本『絵ものがたり正信偈』(法蔵館)は、平易で親しみやすい文章と、美しい絵で構成されている。
刊行後は各地で話題となった。

●万福寺ホームページ
https://manpuku-ji.jimdofree.com/
(担当ライター:いづみ