知っておきたい。パパの育休の取り方・過ごし方

パパの育休の取り方・過ごし方
女性が8割台で推移する一方、
上昇傾向にありながらも令和3年度で13.97%(※)と
依然低い水準となっている我が国の男性の育児休業取得率。
こうした中、2022年10月に創設されたのが
「産後パパ育休」の制度です。
今回は創設の背景や制度の概要について
広島労働局の荻野さんに伺いました。
(※)厚生労働省「雇用均等基本調査」より


お話を伺ったのは


「産後パパ育休」ができた背景

育児休業(以下育休)は、子どもが原則1歳になるまで、働いている方が取得できる休業制度です。男性も取得でき、妻が専業主婦や育休中でも取得可能です。法律で定められたものなので会社の規模も関係なく、休業期間も希望の日数を会社に申請できます。しかしこの育休、女性は毎年8割以上が取得しているのに対し、男性はいまだ1割台という低い取得率です。
こうした男性の育休の取得促進を目指して、「育児・介護休業法」が改正され、2022年10月1日、「産後パパ育休(出生時育児休業)」が創設されました。背景には、「職場が育休を取得しづらい雰囲気だった」「自分にしかできない仕事があった」「収入を減らしたくなかった」など、男性の育休取得が希望に反して実現できていない現状があります。これを改善するため、法改正ではより柔軟で利用しやすい制度、申し出しやすい職場環境の整備などが盛り込まれています。また、第一子出産後に約3割の女性が退職している現状もあり、男女問わずワークライフバランスのとれた働き方を実現することで、女性の継続就業を後押しする目的もあります。さらに、「産後パパ育休」は出生後8週以内に取得できるのですが、これは取得ニーズが高く、実際にこの間に取得している男性が多い期間となっています。
世界的に見ても、日本の男性の家事育児の時間は低水準となっていますが、夫の家事育児の時間が長いほど、妻の継続就業割合が高く、第二子以降の出生割合も高い傾向にあります。男性の育休には少子化対策への期待も寄せられています。


パパの育休のおすすめタイミング

①出産時、退院時  ②里帰り出産から戻ってくる時期  ③ママの職場復帰
出産直後のママがしんどい時期はもちろん、 保育園の送迎など生活リズムが変わる時期にも!


ココが特徴!「産後パパ育休」

「産後パパ育休」の大きな特徴は、子どもの出生後8週間以内に4週間まで、2回に分割して休業を取得できることです。例えば出産時・退院時に1回、妻の産休が終わる頃に1回などに分割でき、1歳までの育休も2回まで分割取得ができるよう法改正されたため、最大4回に分けて取得できるようになりました(※1)。
また、「産後パパ育休」もこれまでの育児休業も、要件を満たせば育児休業給付金が支給され、かつ社会保険料が免除されます。それから、「産後パパ育休」は休業中に一部就業することも可能です(※2)。休業期間内にどうしても外せない仕事がある場合でも、例えば週2日出勤して他は家事育児を行うといったこともできます。

(※1)「産後パパ育休」は分割について初めにまとめて申し出る必要があります。 (※2)会社が予め労使協定を締結した場合に限り、労働者が合意した範囲で可能となります。


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おわりに

法改正後、企業や働く皆さま、そのご家族からの育児休業に関する問い合わせも増え、関心の高さを実感しています。育児休業の取得は法律上の権利であり、会社はそれを拒んだり、育児休業を理由に降格や配置転換を行うことはできません。産後パパ育休が取得できる期間は、産後の女性が心身ともにしんどいことも多い産褥期にあたりますので、産後パパ育休を是非取得してほしいと思います。まずは妊娠がわかったら、ご夫婦で育児休業の取得について話し合い、制度についてお勤めの会社に確認してみてください。そして何かわからないことがあれば、労働局の相談窓口までお気軽にご相談ください。


男女の育児休業の取得期間状況




育休期間の過ごし方

Q1:パパは育休を取った、または取る予定?

Q13


Q2:そもそもパパに育休を取って欲しい、または取って欲しいと思った?

Q23


Q3:パパの育休に期待することは?または期待したかったことは?

二人目出産の際は、両親も遠方で協力は難しそうなので最初の一ヶ月ぐらいは家事の手伝いで育休とってほしいなと思ってます。
全く取ってくれなかったので、一週間でも取り、上の子ども達(二人)を見て欲しかった。
育休を取りやすい環境にして欲しい。
子育ての大変さを共有したい、ママの睡眠不足解消、それぞれの自分時間の確保。
産まれたての大変な子育てを一緒にすることで、一緒に育児をするという感覚を持って欲しかった。
子供の発熱など突発して起こる時に助けてほしい。
離乳食が始まるので、食べさせてあげるのを手伝ってほしい。
家事子育ての大変さを知ってもらいたい。
心の余裕を持った育児を経験して欲しい。
産まれたばかりは分からないことがいっぱいなので大変さと責任感をともに共有したかったです。育休がないと、やはりママの方が最初から子どもとの時間が長いので、悪気はなくても何かあったらママを頼るという流れができてしまう気がします。
休むと収入が減って生活できないので、大変でも休めなかった。育休っていいますが、根本的にもらえるお金が減額されるので、この値上げラッシュの中、無理だと思う。
産後1ヶ月精神的に不安定なのでそばにいてほしい。
一緒にお世話を試行錯誤する。ママも最初は何もわからず手探りで学んでるので、「パパはわからないから」じゃなく一緒に成長したい。
子の成長を見てほしい。育休を経験することで、夫の職場の育休推進に役立ててほしい。
自分と同じくらいの割合で育児家事をしてもらう事を期待したし、してもらった。
産後退院した後体の痛みが激しくて、一週間でも取って欲しかった。




育児休業をより柔軟に取得
「産後パパ育休」制度がスタート!
1歳までの育児休業とは別に、取得可能です。
子の出生後8週間以内に4週間まで、2回に分割して取得できます。
産後パパ育休中に一部就労することができます。
(労使協定と個別合意が必要)
育児休業給付金が支給されます。(一定要件あり)


1歳までの育児休業の分割取得が可能に!
1歳までの育児休業が、 2回に分割して取得できるようになりました。
男女労働者ともに、分割取得が可能です。
1歳以降の育児休業の開始日が柔軟化され、期間途中で夫婦交代することができるようになりました。同時取得も可能です。


育児休業取得例

育児休業取得例


制度についてもっと知りたい


育児休業制度特設サイト


育児休業制度等相談窓口



パパ育休リアルエピソード
育休をとったきっかけや、育休中の過ごし方、
パパやママに起こった変化や気づきなど
育休をとった現役パパのリアルなエピソード!


原田リハビリ整形外科/髙浦 佑介さん

産後の妻に休んでもらえ、子どもと長く過ごせる
育休の意義は大きい

オムツ交換や寝かしつけ、子どもが寝ている間に台所仕事、洗濯、掃除、朝食から夕食の支度と、育休中は産後間もないママをとにかく動かさないように家事全般を行いました。産褥期はしんどいと聞くので、ママの身体を休ませてあげられることがパパ育休の大きなメリットだと思います。職業柄、身体については熟知しているので、2〜3日に一度は産後リハビリも行いました。また、とにかく子どもが可愛いです。生まれたばかりの赤ちゃんの顔の変わり方や仕草を長く一緒にいることで見ていられるのも、育休を取って良かったと感じる点です。
仕事については、理学療法士なので担当制で患者さまをサポートさせていただいています。そのため相性があったり自分しか知らないことも多く、スタッフ同士で相談しながら育休中を任せるスタッフに申し送りする内容を決めていきました。正直家にいると「あの患者さまはどうなっているかな」と気になるのですが、信頼できるスタッフばかりなので家事育児に集中するよう心がけました。
里帰り出産や近くの家族の助けがある方もいらっしゃると思います。我が家はそれが難しかったので自分が取るしかない状況だったというのもありますが、育休を取ってみてせめて沐浴の時期までは絶対にフォローが必要だと感じましたし、ママが一人であれこれ抱え込まないようにすることも大切だと思えました。


髙浦佑介さん
【 育休期間…出産予定日前〜2ヶ月間 】


【 Advice!】
育休は出生後ですが、いつ生まれるかわからないので、私の場合は出産予定日の少し前から有給休暇を使用する予定で職場に育休を申請しました。実際、予定日より少し早く生まれたので、心に余裕を持って出産日を迎えられたと思います。


ママから一言

ママから一言
育休をとってくれたおかげで、安心して出産して退院することができ、心に余裕をもって毎日育児を楽しめています。日に日に成長していく赤ちゃんを、2人で見守ることができてうれしいです。本当によかった、ありがとう。



積水ハウス株式会社/村田 浩隆さん

対象となる全員が
1ヶ月以上の育休を完全取得

私の会社では、子どもが3歳になるまでに1ヶ月以上の育休を取る制度があり、最大4分割できるため、出産後半年、1年、2歳などのタイミングで1週間を4分割して取得しました。当社では育休取得に向けたツールの整備や意識改革のため“育休フォーラム”も開催し、19年2月の本格運用開始以来、対象者全員が1ヶ月以上の育休を取得しています。だから社内で育休に対するマイナスイメージもなく、お客さまも快く受け入れてくださっています。育休中はとにかく子どもと一緒にいる時間を増やし、ママがリフレッシュできる時間が増えるよう努めました。最終日には疲れが出てぎっくり腰になってしまいましたが(笑)。
仕事についてはお客さまと社内調整など多岐に渡るため、スケジュールの調整やプレゼン資料を先行して作成したりと工夫が必要でしたが、営業、設計、現場監督など周りのメンバーにも協力してもらい乗り切れました。リモートや直行直帰ができる会社なので、最近では早出・早帰りをしてお風呂に入れたりしますが、生まれたばかりの頃はそこまでではありませんでした。「育児を手伝っている」という感覚ではなくなったのは、育休を取ったからではないかと思います。子どもの成長は本当に早いです。育休でその成長をママと一緒に見ることができて良かったです。
なお、私たちのように夫婦だけで出産を迎える方には是非、産後すぐの育休を取ってほしいと思います。一番助けてほしかったのは産後の1ヶ月だ…とママは言っていました。


村田浩隆さん
【 育休期間…出産後半年〜1週間×4回 】


【 Advice!】
1人目であれば何もわからない状態で子育てが始まり、2人目であれば1人目の子どもを誰がお風呂に入れる等いろんな課題が山積していきます。家族のために…そうした意識が芽生えるのも、育休という時間を持てたからこそだと思います。


こんな工夫も!

家族ミーティングシート
同社では、家族で育児休業取得の時期や、休業中の家事・育児についてじっくり話し合い、計画を立てるための「家族ミーティングシート」も活用されています。



パパ育休「推進」企業をご紹介!

育児・介護休業法の改正により
男性の育休取得がより進むことが
今後さらに期待されますが、
いち早くパパ育休を推進している企業も。
その経緯や思いについてお聞きしました。


原田リハビリ整形外科
【 原田リハビリ整形外科 】
http://www.haradarehaseikei.com/


原田健司さん
数字よりも大事なのは、スタッフの満足度

今回、理学療法スタッフの奥さまが妊娠半年の頃に育休取得の相談を受け、二つ返事でOKしました。断る理由なんてありませんから。ただ、理学療法士という仕事の特性上、他のスタッフが代わりに業務を行なうことが難しいため、人材のカバーだけは課題でしたが、これもタイミングよく新たな仲間が入ってきてくれました。育休はある程度期間の決まっているものですから、その間の売上どうこうより、ここで働いてくれるスタッフの満足度の方が大切だと考えています。


日頃から相談しやすい職場の雰囲気づくりを

元々女性の多い職場で、妊娠や出産もみんな心から喜びあう職場の風土が、男性スタッフが育休を取ったことでよりアットホームになり、子育てという共通の話題も生まれたように思います。また、患者さまから育休中のスタッフの戻りを心待ちにされている声などを聞くと、改めてスタッフが可愛がられていることに嬉しくなりました。今回のパパ育休を通じて、育休を取りやすい職場環境を整えることはもちろん、話しやすい、相談しやすい企業風土の醸成も大事だと実感しました。