絵本を通して子どもの心を育てる

望月主税-統括園長-img


絵本の読み聞かせは、子どもの想像力や言葉の力を育てるだけでなく、読み手との信頼関係や心の安定にもつながる大切な時間です。そのような読み聞かせ文化を応援する新たな賞「みんなのよみきかせ絵本大賞」が創設され、第1回の授賞式が10月に開催されました。

この賞は、全国2,000園以上の子どもと先生が実際に絵本を読んで投票するユニークな仕組みで、「園児さんと先生でえらぶ!」部門の大賞には『ニンジンジン』(白泉社)が選ばれました。ユーモアたっぷりの物語と心地よい七五調の文章が子どもたちを夢中にさせた一冊です。ほかにも『ぎょうざが いなくなり さがしています』『きょうりゅうかくれんぼ』など、タイトルを聞くだけでワクワクする作品が並びました。どの絵本にも、子どもたちの笑顔や驚きが自然と広がる力が詰まっています。

当園でも日々の保育の中で、先生方が読み聞かせの時間をとても大切にしています。声の抑揚や間の取り方を工夫して物語の世界へ引き込む姿に、子どもたちもぐっと集中して耳を傾けています。また、国際バカロレアの探究活動にあわせて「生き物」「感情」「文化」などをテーマにした絵本を選び、学びと心の成長をつなげています。

外国人講師による英語での読み聞かせも人気の時間のひとつです。異なる言語の響きやリズムに親しみながら、子どもたちは「伝わる楽しさ」や「文化の違いって面白い」という感覚を自然に育んでいます。講師の出身国にちなんだ物語や歌を紹介することもあり、世界をもっと身近に感じるきっかけとなっています。読み聞かせを通じて親しんだ物語をもとに、ミニオリンピック(運動会)やウィンターパフォーマンス(発表会)の活動内容を決めることもあります。

おうちでも、毎日の決まった時間でなくても、絵本を通じたふれあいはきっと子どもの心に残ります。忙しい日々の中で「今日は1ページだけ」「一緒に表紙を見るだけ」でも大丈夫。ゆったりとした気持ちで向き合うことが、何より大切です。「どんなお話だった?」「どのページが好きだった?」と声をかけてみるだけで、自然と会話も広がります。

絵本は、大人と子どもが同じ時間を共有し、心を通わせることのできるかけがえのないツールです。園と家庭、それぞれの読み聞かせが、子どもたちの心の土台を豊かに育ててくれることを心から願っています。


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