対話する力を育むために

なぎさ公園小学校では、開校以来、道徳の時間を「にんげん」という特別な名前で大切にしてきました。この時間は、子どもたちが人としてどう生きるかを考える機会として設けています。昨今「対話力」という言葉をよく耳にしますが、これは人と人とが違いを認め合いながら、理解し合おうとする力です。こうした力を育むために、昨年度から全学年で「にんげん」の時間にてつがく対話を取り入れる取り組みを始めました。「小学生に哲学?」と思われるかもしれませんが、ご安心ください。子どもたちの発達段階に応じて無理のない形で進めており、自分の考えを言葉にすること、そして人の意見を聞いて考えを深めることが、しっかりとできることを目的としています。昨年は、この取り組みを教職員全員が一年間かけて実践しました。

対話と会話

さて、「対話」と「会話」は何が違うのでしょうか?「会話」は、家族や友だちなど、気心の知れた人と交わす日常的なおしゃべりです。ある程度展開が読めるので、安心して話すことができます。一方、「対話」は、自分とは育った環境や文化、価値観の違う相手と話すことです。結論がどうなるかわからない中で、お互いの考えを出し合い、尊重しながら進めることが求められます。

少人数からグループへ

低学年の子どもたちは日々、話したい気持ちでいっぱいです。朝の登校時にも「先生、聞いて!」と話しかけてくれます。しかし、友だちとの会話では、言いたいことだけを言ってしまい、うまく伝わらなかったり、ケンカになってしまったりすることがあります。だからこそ、私たちは「対話」を学ぶ機会が必要だと考えています。はじめは少人数での話し合いからスタートし、徐々に人数を増やしてグループでの対話へと広げていきます。これは、将来様々な文化や言語を持つ人々と出会い、一緒に生きていくためにとても大切な力です。

平和な社会は意見の異なる者が共存するところに生まれる

これは、学園の創設者である鶴襄(つる のぼる)先生が残された言葉です。世界では、争いや対立が絶えません。しかし、違う考えを持つ人とこそ、丁寧に対話し、お互いに理解し合うことが、平和への第一歩だと私たちは信じています。今年の夏、戦後80年という節目を迎えます。未来を生きる子どもたちが、対話を通して平和な時代を築いていけるよう、これからも教職員一同、心を込めて取り組んでまいります。





上野和之校長