7月3日には同美術館にてアーティストトークが開催され、事前に申し込んだ親子連れや学生などが参加しました。
拍手の中、入場した野坂さん。
冒頭で「コイワシは3度洗えばタイの味と母に言われました。
原画展、3度見なけりゃ分からない。ぜひ3度来てくださいね」
会場からは笑い声!
この瞬間、会場の全員が、野坂さんの大ファンになりました。
ふすまにまで絵を描いていた子ども時代、絵が好きだからと絵画を習わせてもらったものの、図工の成績はよくなかったと話す野坂さん。
「絵を上手くしようとしなかったことがよかったんです。上手くなっていたら絵が嫌になっていたかも」という話に、多くのパパ、ママがうなずいていました。
野坂さんは小学校4年生の頃、父親の持っていた画集でゴッホを見て「こういう描き方があるんだ」と驚き、同時に「絵っておもしろいな」と感じたそう。
中学2年生のとき父親が「好きな絵の道へ進んでもいい」と言ってくれたことが、絵本作家である「今」につながっています。
結婚し、子どもをもうけたことで、普段立ち寄らない書店の絵本コーナーに行き、偶然手にした絵本が転機に。
それは、野坂さんが幼い頃読んでもらった絵本「ちいさいおうち」でした。
この出合いが、野坂さんが絵本作家を志すきっかけとなりました。
1985年に「ゆきまくり」(福音館書店)でデビュー。
以後、作風の違う数多くの作品を生み出しています。
野坂さんは、丁寧な取材を重ねることでも知られています。
「にゅうどうぐも」「ふゆのあらし」(福音館書店)などは、取材だけで2~5年かけた力作。
「2,3度でだいたいのことは分かりますが、その奥にあるものを知らないと絵は描けないものです」という言葉は、子どもたちの心にも響いたことでしょう。
また「題材の内容によって、異なる技法で作風を変化させている」ことも、野坂さんの絵本の特徴です。
描き方は、油絵、版画、切り絵など多彩で、見る人を魅了します。
「絵本の作風は全て違います。料理人のように良い素材を見つけて、素材ごとに違う料理をするのと同じ」と野坂さん。
「新たな表現へ挑戦し続けることは、自分自身のモチベーションにもなっている」という話には、私自身心から共感しました。
作風の違いは、ぜひ原画展でしっかりと見て、確認してくださいね。
「再来年には、ちょっとトリッキーな電車の絵本を出版する予定です」
次はどんな野坂ワールドが楽しめるのか、今から楽しみですね。
終わりなき挑戦を続ける野坂さんの、楽しく前向きで明るいトークに、あっという間の90分。
トーク終了後は、絵本にサインを求めるたくさんのファンの行列ができました。