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第28回:子育ての矛盾(パート1)

 前回は、探求ベースの学びでは知っていることから始めることの重要性について書きました。この内容が、我々の親としての経験にも当てはまるので、リスクの考えを広げ、子供が日常で危険に遭遇した時、親が体験してきたリスクがどのように自分たちの不安を軽減する助けとなるかについて書かせていただきます。
 私は17歳の時、友達と野原を走り回っており、鉱山の通気口に落ちそうになったことがあります。あの瞬間を思い出しただけで、30年以上経ったいまでも震えがきます。身体的に酷い結果をもたらしたであろう、このような経験は、誰もが覚えているのではないでしょうか。しかしリスクは身体的なものだけではないのです。精神的リスクも我々の人生の中で重要な部分を占めているのです。様々な形で我々は心に傷を持ち続けていると思います。学校や職場でいじめられた経験のある方、人間関係が崩壊した方、トラウマになるような状況を経験した方、と述べ続けるときりがないのではないでしょうか。
 大人として、我々は身体的にも精神的にもあちこちに傷を持ちながらここまで生き延びてきています。しかし子育て中の親にとっては、子供が傷つくことにためらいがあることでしょう。これはどの時代においても親が抱える責任の重さであり、我々の親も同じ思いだったことでしょう。不安や苦悩を経験した私たちだからこそ、本能的に子供をかばおうとしますが、いつの日か広い世界へと羽ばたいていく子供たちには、リスクを自分の力で乗り越えて自信をつけてもらう必要があるのです。子供を危険から守る必要がありますが、リスクに直面することで、子供は将来的に危険から自分の身を守る術を学ぶのです。
 子供が自己防衛を身につけるには、リスクに晒される必要があります。これが子育てにある矛盾なのです。それ故に子育てには難しい選択をしないといけないことが多々あるのです。今は子供を守りたい。でも将来的には自分を守る術を身に着けてもらいたい。明らかに矛盾していますが、何とか調整しながら、親が方向を定めていかなければならないのです。
 守りか将来への備えかを考える時、我々はこの相反する2つのジレンマに向かい合わなくてはなりません。子供には安全で快適でいて欲しい。しかし同時に色んな事にチャレンジして欲しいし、あらゆることを経験して欲しいのです。家族としていつまでも一緒に過ごしたいと思う一方、世界へと羽ばたいていく時がきたら、巣立って欲しいと思うのです。この2つのジレンマについて、よく考える必要があります。
 次号では、親が抱える矛盾をどう解決すればいいのか、自立に伴い子供が直面するであろうリスクとどのように向き合うべきかを、それを子供とどのように話をすればいいのか、について見ていきたいと思います。


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